メーカー営業の未来——ルート営業は消えるのか、進化するのか
メーカーのルート営業はAIやECに代替される?製造業の営業が直面する変化と、生き残るための進化の方向性をデータと実例で解説。
ジン
長くやったから言える、本当のこと。
俺は製造業の営業を20年近くやってきた。工場を回り、資材部の担当者と雑談して、発注書をもらう。そういう仕事を「ルート営業」って呼ぶ。
「この仕事、あと何年続けられるんだろう」——その不安が頭をよぎるようになったのは、3年前。取引先がBtoB ECで発注するようになって、「わざわざ来なくていいよ」って言われたとき、本気で考えた。
結論から言う。ルート営業は「消える」んじゃなくて「形が変わる」。問題は、その変化に自分が対応できるかどうか。
メーカー営業の現在地——数字で見る
まず、日本の製造業の規模を確認しよう。
総務省「労働力調査」(2023年)によると、製造業の就業者数は約1,044万人。全産業の約15%を占める巨大セクター。
この中で営業職がどれだけいるかの正確な統計はないけど、経済産業省の調査では製造業の営業・販売部門は従業員の10〜15%程度を占めるとされてる。ざっくり100万人以上のメーカー営業が日本にいる計算。
じゃあ、この巨大な職種にどんな変化が起きてるのか。
「御用聞き型」ルート営業が縮小する3つの理由
1. BtoB ECの普及
経済産業省「電子商取引に関する市場調査」(2024年)によると、BtoB EC市場規模は約465兆円、EC化率は40.0%。製造業でもモノタロウ、ミスミ、Amazonビジネスなどのプラットフォーム経由の調達が増えてる。
「いつもの消耗品」「定番の部品」の発注は、営業担当者を介さなくてもWebで完結する。御用聞きの必要性がなくなりつつある。
2. AI受発注・自動補充の進化
在庫管理システムとAIを組み合わせた自動発注の仕組みが実用化段階に入ってる。在庫が一定量を下回ったら自動でサプライヤーに発注をかけるシステム。
これが普及すれば「次の発注はいつですか?」って聞きに行く必要がなくなる。ルート営業の最も基本的な機能が自動化されるってこと。
3. 購買部門のデジタル化
大手メーカーの購買部門では、サプライヤー評価・価格比較・発注管理をデジタルツールで一元管理する動きが進んでる。営業が持ってくる見積書を手作業で比較する時代は終わりつつある。
進化する方向——「消える」んじゃなくて「変わる」
じゃあ、メーカー営業はすべてなくなるのか。答えはNo。
縮小するのは「御用聞き型」であって、以下の営業はむしろ価値が高まってる。
技術提案型営業
顧客の製造工程や製品設計を理解した上で、「この素材を使えばコストが15%下がる」「この部品の公差を変えれば歩留まりが改善する」って技術提案ができる営業。
カタログを持って回るだけの営業とは本質的に違う。顧客の技術者と対等に話せる知識が必要だけど、その分AIに代替されにくい。
ソリューション型営業
製品単体じゃなくて、「顧客の課題を解決するパッケージ」を提案する営業。たとえば工場の省エネ化なら、機器の提案だけじゃなく、導入設計・運用サポート・効果検証までを一貫して担う。
グローバル営業
日本の製造業は海外売上比率が高い。経済産業省「海外事業活動基本調査」によると、製造業の海外生産比率は約25%。海外拠点・海外顧客との折衝ができる営業は需要が堅調。
メーカー営業からの3つのキャリアパス
「このままルート営業を続けていいのか」って感じてる人に、現実的なキャリアパスを3つ。
パス1: セールスエンジニア(技術営業)
自社製品の技術知識を武器に、顧客の技術課題を解決する営業職。メーカー営業の中でも技術寄りの経験がある人は、このポジションへの移行がスムーズ。
年収は製品の専門性による。半導体製造装置や精密機器の技術営業は600〜900万円台のケースが多い。
パス2: 製造業向けSaaS営業
生産管理・品質管理・在庫管理・IoTプラットフォームなど、製造業向けのSaaSプロダクトを扱う企業への転職。「製造現場の言葉がわかる営業」は希少で、業界知識がそのまま差別化要因になる。
SaaS営業の年収構造はOTE込みで従来メーカー営業よりも高くなるケースがある。
パス3: 営業企画・DX推進
自社のメーカー営業組織をデジタル化する「内部改革」のポジション。SFAの導入推進、BtoB ECの立ち上げ、デジタルマーケティングの導入など。
転職しなくても、現職で手を挙げれば担当できる可能性がある。「営業現場をわかっている人がDXを推進する」のが最も効果的だと、多くの企業が気づき始めてる。
今日からできる3つのアクション
大きなキャリアチェンジはすぐにはできない。でも、今日からできることはある。
- 自分の顧客リストを「価値」で分類する
担当顧客を「御用聞きで回ってるだけ」と「技術提案ができている」に分ける。前者が大半なら、正直危機感を持つべき。
- 自社製品の技術仕様を深く理解する
カタログに書いてあること以上に理解する。製造工程、材料特性、品質基準。技術部門の人と話す時間を意識的に増やす。
- デジタルツールに触れる
SFA(Salesforce、kintoneなど)を自社で使ってなくても、無料トライアルで触ってみる。BtoB ECの仕組み(モノタロウ、Amazonビジネス)を顧客視点で体験してみる。
メーカー営業は20年やってきた。だからこそ言える。この仕事は「消える」んじゃない。「変わる」んだ。
変化を恐れるんじゃなくて、変化の方向を知ること。それが最初の一歩。自分のキャリアの現在地が見えてないなら、まずはストッパー診断を試してみてほしい。
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参考文献・出典
- 総務省「労働力調査 2023年平均結果」
- 経済産業省「令和5年度 電子商取引に関する市場調査」(2024年)
- 経済産業省「海外事業活動基本調査」
- doda「平均年収ランキング 2024年版」
よくある質問
- Qメーカーのルート営業は将来なくなる?
- 完全にはなくならない。ただし「御用聞き型」は縮小する。技術提案ができる営業は引き続き需要あり。
- Qメーカー営業からIT業界に転職できる?
- 可能。製造業向けSaaS(生産管理・在庫管理等)では製造業の知識を持つ営業が重宝されます。
- Qメーカー営業の平均年収は?
- doda調査(2024年)で約480万円。大手メーカーや専門分野(半導体等)なら600〜800万円台もあり。
- Qメーカー営業のDXって具体的に何?
- SFA導入・BtoB EC化・デジタルマーケティング活用が代表的。製品カタログのデジタル化やWeb見積もり対応も増えてる。
- Qルート営業の経験は転職で評価される?
- 評価されます。特に「長期的な関係構築力」「顧客の業務プロセスへの深い理解」はCSや技術営業への転職で強みになる。
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