SaaS営業と従来型営業——同じ『営業』で年収が2倍違う理由
SaaS営業と従来型営業では平均年収に大きな差がある。なぜ差がつくのか、商材・利益率・OTE構造を分解して、転職前に知るべき現実を解説。
ハル
俺も最初は「SaaS営業って何が違うの?」って思ってた。
営業は営業でしょ、売れれば一緒でしょ——正直そう思ってた時期がある。でも数字を見たとき、ゾッとした。同じ営業職で、年収が2倍近く違う。
これは運じゃない。構造の違いだ。今日はそれを正直に話す。
「同じ営業」で年収が2倍違う、その実態
まず数字から。
SaaS企業の年収データを見ると規模感が伝わる。2023年時点の有価証券報告書データだと、平均年収が1,000万円を超えるSaaS企業が複数存在する。上位企業が軒並み700〜1,000万円台に並んでる。
一方、従来型の無形商材営業(保険・人材・広告)の平均年収は400〜600万円台が中心。有形商材(メーカー・商社)はさらに低い場合も多い。
同じ経験年数・同じ職位で比べたとき、SaaS企業の方が年収が高くなりやすい。そこには構造的な理由がある。
なぜSaaS営業は年収が高いのか——3つの構造的理由
1. 商材の粗利率が高い
SaaSの粗利率は一般的に70〜80%。モノを作ったり倉庫に置いたり配送するコストがほぼかからない。
従来型の有形商材だと粗利率は20〜40%が相場。売上1億円でも残る利益は2,000〜4,000万円。SaaSなら7,000〜8,000万円残る計算。
利益が多ければ営業への報酬に回せる原資がデカくなる。これが年収差の根っこ。
2. OTE(On-Target Earnings)構造
SaaS企業では「OTE」って概念で報酬が設計されることが多い。
OTEは目標100%達成時の想定年収。ベース給与+インセンティブの合計で提示される。たとえば「OTE 900万円(ベース600万円+インセンティブ300万円)」みたいな形。
目標を超過達成すればOTEを上回ることも珍しくない。逆に未達ならベースのみになるリスクもある。この設計が、成果を出せる人に有利に働く。
従来型の営業は固定給+小さなインセンティブ(orゼロ)が多いから、どれだけ売っても報酬に反映されにくい。
3. 契約単価とLTVの大きさ
SaaSは月次・年次の継続課金モデル。一度受注すると解約されない限り毎月売上が積み上がる。企業にとって顧客のLTV(生涯価値)が大きいから、顧客を獲得する営業の価値が高く評価される。
エンタープライズ向けSaaSだと年間1,000万〜数億円の契約も珍しくない。大型商談を担当できる営業は当然報酬も高くなる。
SaaS営業と従来型営業——仕事内容の違い
年収だけじゃなく、仕事の中身も違う。
| 項目 | SaaS営業 | 従来型営業 |
|---|---|---|
| 商材 | ソフトウェア(無形) | 有形商材/保険/広告など |
| 営業スタイル | IS→FS→CSの分業制が多い | 一気通貫が多い |
| 使うツール | Salesforce/HubSpot/Gong等 | 名刺管理・Excel中心 |
| 成果の計測 | KPI・SFA管理・週次レビュー | 結果(売上)重視 |
| 必要スキル | ロジック・データ読み・プロセス | 関係構築・根性・勘 |
| リモート | 可能が多い | 訪問必須が多い |
SaaS営業は「プロセス管理型」。なぜ売れたのか、なぜ失注したのかを分析して再現性を高める思考が求められる。感覚や根性より、数字とロジックで話す文化。
従来型から転職して最初に戸惑うのは「なんでも数値化して話す文化」だって声が多い。慣れたら自分の成長を客観視できて働きやすいけど、最初はしんどいと感じる人もいる。
SaaS営業に向いている人、正直なチェックリスト
俺自身がどん底から這い上がったのは、自分の仕事を「数字で語れる」ようになったから。それはSaaS的な思考だったと後から気づいた。
チェックリストを見てほしい。
向いてる人
- なぜ受注できたか・失注したかを言語化できる
- ツールを使うのに抵抗がない(Salesforceとか)
- 商材を深く理解して説明するのが好き
- 数字の目標に向かってプロセスを組み立てられる
- フィードバックをポジティブに受け取れる
正直ちょっと厳しいかもって人
- 「気合と根性で売ってきた」が唯一の武器
- 顧客との飲み会・ゴルフは得意だけど、それ以外の営業をやってない
- 新しいツールや仕組みに馴染むのに時間がかかる
当てはまったからって絶対ムリじゃない。ただ入社後に意識的に変えていく努力は必要になる。
平均年収1,000万円超のSaaS企業——何が起きているのか
2023年時点の有価証券報告書で、平均年収が1,000万円を超えたSaaS企業がある。エンタープライズ向けの大型契約が中心で、顧客単価が高い企業だ。
この数字は全社平均であって「営業全員が1,000万円」じゃないのは注意。
ただしSaaS企業でパフォーマーとして実績を積めば、30代前半で800〜1,000万円台に届く可能性は現実にある。従来型営業に10年いてもそこに届かないケースと比べると、構造の違いの大きさがわかる。
転職前に準備する3つのこと
「じゃあSaaS営業に転職したい」ってなったとき、準備なしで動くのはもったいない。俺が転職活動を支援してきた経験から言うと、この3つをやっておくかで内定率が大きく変わる。
- 現職での実績を数字で整理する
「売上を上げた」だけじゃ弱い。「前年比120%、チームトップの成績を3四半期連続維持」「新規開拓で月20件アポ、コンバージョン率30%」って形で語れるように整理する。
SaaS企業の採用担当は数字に慣れてるから、数字のない自己PRはボヤけて見える。
- SaaS・プロダクト知識の基礎を学ぶ
転職先候補のプロダクトを実際に触る(無料トライアルがあれば使う)。競合との違いを自分なりに整理する。「なぜこのプロダクトを売りたいか」を言語化できると面接の印象が段違い。
- MEDDICなどのフレームワークを習得する
MEDDIC(Metrics・Economic Buyer・Decision Criteria・Decision Process・Identify Pain・Champion)はSaaS営業で広く使われる商談管理フレームワーク。名前を知ってるだけじゃなく、自分の営業に当てはめて説明できると「SaaS的思考がある」と見なされる。
年収の差は、能力の差だけじゃない。構造の違い。同じ努力をするなら、より大きく報われる場所を選ぶ——それは合理的な判断だ。
転職は手段であって目的じゃない。でも「なぜここにいるのか」を問い直すきっかけにはなる。
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- エンタープライズ営業の年収1,000万超——大型商談に必要な3つの能力
参考文献・出典
- 各社有価証券報告書(2023年9月期)
- JACリクルートメント「営業企画職 平均年収データ」
- マイナビ「転職動向調査 2025年版」
- Salesforce「State of Sales Report」(営業担当の非営業業務割合)
よくある質問
- QSaaS営業は未経験から転職できますか?
- できます。既存営業で数字を出した実績があると有利。IS経由でSaaS企業に入るルートが現実的です。
- QSaaS営業の年収はどれくらいですか?
- 3〜5年目で500〜800万円台が中心。外資系やスタートアップではOTE 1,000万円超のポジションもあります。
- Q従来型営業からSaaS営業に転職するデメリットはありますか?
- あります。プロダクト知識のキャッチアップが必要で、立ち上がりが遅いと年収が下がるリスクも。OTEだけでなくベース給与も確認しましょう。
- QOTEとは何ですか?
- On-Target Earningsの略。目標100%達成時の想定年収です。ベース給与+インセンティブの合計額で提示されます。
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ハル
35歳営業企画マネージャー
テレアポ300件/日の時代から、AI活用で月次戦略を回す立場へ。どん底を知っているから、リアルな話しかしない。