スタートアップ営業 vs 大手営業——20代でどちらを選ぶべきか
スタートアップと大手企業の営業を年収・成長速度・スキル・リスクで比較。20代のキャリア選択に必要な判断軸を正直に並べた。
ジン
長くやったから言える。どっちを選んでも後悔する瞬間はある。大事なのは「何のために選ぶか」だ。
20年近く営業の世界にいると、大手出身もスタートアップ出身も数えきれないほど見てきた。どっちが「正解」かは、その人の状況でまったく変わる。だから両方のリアルを正直に並べる。
スタートアップ営業の実態
良い面
成長速度が段違い。スタートアップだと、入社半年で営業プロセスの構築を任されたり、1年目でマネージャーになったりする。大手なら5〜10年かかる経験を、2〜3年で積める環境。
人が少ないから、IS(インサイドセールス)からFS(フィールドセールス)、CS、さらには営業企画まで一人が兼務することも珍しくない。結果的に「営業の全体像」を理解できる。
あと、経営者との距離が近い。経営判断のプロセスを間近で見られるのは、将来マネジメントを目指す人にとって大きな財産。
厳しい面
仕組みがない。大手なら当たり前の研修プログラム、営業マニュアル、先輩のOJT。スタートアップにはないことが多い。「とりあえず売ってきて」が最初の指示、なんて企業もある。
東京商工リサーチのデータによると、設立5年以内の企業の廃業率は約20%。プロダクトが市場にフィットしなかったら、営業がどれだけ優秀でも売れない。環境リスクが高い。
年収面だと、シード期〜シリーズAのスタートアップで350〜450万円くらい。ストックオプション(SO)が付くこともあるけど、上場しなければ価値はゼロ。
大手企業営業の実態
良い面
研修・教育体制が充実。大手メーカーや金融機関は、新人向けの体系的な研修プログラムを持ってる。ロールプレイ、先輩同行、段階的な担当エリア拡大。成長のステップが設計されてる。
ブランド力。名刺を出した瞬間に門前払いされることが少ない。信頼を「個人」じゃなく「会社の看板」で得られるから、営業活動のハードルが低い。
安定した報酬。大手メーカー営業で初年度400〜500万円、30代で600〜800万円が目安。福利厚生・退職金を含めると生涯収入では大きな差が出る。
厳しい面
専門性が身につきにくい。大手だと「会社の看板で売れちゃう」から、自分の実力がわかりにくい。転職市場で「あなた個人の強みは?」と聞かれて答えに詰まる人は多い。
キャリアの固定化。大手の異動は会社主導で、自分でキャリアを選びにくい。「営業→管理部門→地方支店」みたいに、本人の意志と関係ないローテーションが組まれるリスクがある。
意思決定のスピード。社内稟議に時間がかかる。お客さんの要望に対して「持ち帰って検討します」を繰り返す構造は、スピード重視の人にはストレス。
年収比較——短期と長期で見え方が変わる
| 項目 | スタートアップ | 大手企業 |
|---|---|---|
| 入社1年目 | 350〜450万円 | 400〜500万円 |
| 入社3年目 | 450〜700万円 | 450〜600万円 |
| 入社5年目 | 500〜1,000万円(役職次第) | 550〜750万円 |
| SO・インセンティブ | SOあり(不確実)+高インセンティブ | 安定ボーナス+福利厚生 |
スタートアップの方が「振れ幅」がデカい。急成長企業のマネージャーなら5年目で1,000万円超えもあるけど、事業が失敗したら転職を余儀なくされる。大手は上限が見えやすいけど、安定してる。
20代で判断するための3つの問い
問い1: 「看板のない自分」に価値を感じられるか
スタートアップでは会社のブランドに頼れない。自分の名前と実力で勝負する必要がある。「それが怖い」なら、まず大手で基礎を固めるのが現実的。「それが燃える」なら、スタートアップ向き。
問い2: 不確実性を楽しめるか
スタートアップは毎月のように方針が変わる。プロダクトが変わり、ターゲットが変わり、営業プロセスが変わる。その変化をストレスと感じるか、面白いと感じるか。
問い3: 5年後にどんなスキルセットが欲しいか
「営業マネジメント」「事業開発」「プロダクト連携」を5年後にやりたいなら、スタートアップの方が経験を早く積める。「業界専門性」「大型案件の交渉力」「組織で成果を出す力」を求めるなら、大手が向いてる。
両方を経験するという選択肢
正直、20代のうちに両方経験するのが一番コスパが高い。
大手→スタートアップ: 大手で営業の基本動作・業界知識・ビジネスマナーを身につけて、3〜5年目でスタートアップに転職する。大手の経験があるスタートアップ営業は、お客さんからの信頼を得やすいし、組織構築にも貢献できる。
スタートアップ→大手: スタートアップで自走力・幅広いスキル・意思決定の速さを身につけて、大手に移って大型案件・組織営業を経験する。スタートアップ出身者が大手に入ると、スピード感と行動力で評価されることが多い。
どちらが先でも、20代のうちに「違う環境で営業した経験」を持ってることが、30代以降のキャリアで大きな武器になる。
この記事を読んで「自分はどっちだろう」と迷ってる人。その迷いは正しい。即答できる人の方が少ないから。
まずは自分の営業タイプを客観的に把握してみてほしい。ストッパー診断で、自分が何にブレーキをかけてるかがわかれば、次の一歩が見えてくる。
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参考文献・出典
- 東京商工リサーチ「企業倒産・廃業動向レポート」(設立5年以内の廃業率約20%)
- パーソルキャリア「転職市場動向レポート 2024年」
- 各SaaS企業・大手企業の採用ページ(年収レンジ参考)
よくある質問
- Qスタートアップ営業の年収は大手より低いですか?
- 初年度は大手が高いケースが多い。大手メーカーで400〜450万円 vs シード期スタートアップ350〜400万円。ただしシリーズB以降のSaaS系なら500〜700万円もあるし、SO含めると逆転する可能性あり。
- Q大手営業からスタートアップへの転職は難しいですか?
- 経験次第。テレアポ→訪問→受注まで一気通貫でやってた人は即戦力。ルート営業のみ・チーム分業で個人完結してない人は、自走力を求められる環境にギャップを感じることがある。
- Qスタートアップ営業のリスクにはどのようなものがありますか?
- 事業撤退・資金ショート・プロダクトの方向転換。営業プロセスが未整備で自分で仕組みを作る必要がある。設立5年以内の廃業率は約20%(東京商工リサーチ)。
- Q20代でスタートアップと大手、どちらを経験すべきですか?
- 両方が理想。順番は『大手→スタートアップ』の方がリスクが低い。大手で基本を身につけてからスタートアップで応用するルートは成功例が多い。逆のルートも有効。
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ジン
41歳フィールドセールス VP
20年以上の現場経験。エンタープライズ大型商談の修羅場をくぐってきたから言える、長期視点のキャリア論。